観光, 商店街
データとアイデアで描く高知市中心エリア「帯屋町商店街」の未来
この情報は2023年1月15日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、四万十市の中心市街の天神橋商店街にある複合施設「Shimanto+Terrace はれのば」の設立について、施設内で「cafe n2」を営んでいる守崎店長に色々お聞きしました。
地方商店街の過疎化は止まらない。
大手郊外型商業施設に客を奪われ、かつては賑わった商店街もシャッター街となり、閑散となった街が多い。
だが、四万十市中村天神橋商店街は、違った。
新店舗も見受けられ、若い人や家族連れ、観光客が行き交う。
きっかけは、商店街の中央に出来た「はれのば」という複合施設であるという。
現在、「はれのば」がある、旧土豫銀行跡地をどう活用するか。
買い物客が減少するなか、街に出てきてもらう魅力的な場所にする。
文化を発信するコミュニティハブにする。
周辺商店街へのシャワー効果を創造する。
そして、その場所が商店街の活性化を生み出す。
基本方針が決まりプロジェクトが始まったが、船頭多くして船山に登るで、指図する人が多すぎて混乱し、当初は遅々として前進しなかったという。
ここまではよくある話である。
また、いいアイデアを進めようと思っても、保守的な方から横やりや批判が入って進まない。
これまた商店街の新しい試みを進めようと思った時に、よく起こることである。
だが、そこで新たな決め事を作った。
1.自分たちも出資する
2.役員は給料を取らず、配当もなし
3.利益は町づくりに配当する
これによって、次第に批判は少なくなっていった。
そうして2020年4月に「はれのば」はオープンしたのである。
時はコロナ真っ盛りである。
施設の真ん中に広場を作り、カフェや和食店、ラーメン、焼肉店などが店を連ねるモダンな複合施設は、コロナ禍で順調と言えるスタートではなかったものの、次第に本来の役目を果たすようになっていったという。
キーワードは「人」である。
どんなお洒落な建物、最新の企画であってもいつかは飽きられる。
しかし、人は色褪せない。
「笑顔がある。出会いがある。逢いたい人がいる。」場所にしよう。
魅力ある店主や従業員のいる場所にしよう。
そう決めて、運営を進めている。
商店街に面して「cafe n2」を営む、Iターンの守崎店長は言われた。
「スタッフとミーティングを重ねて、お客様の嗜好や喜んでいただいたことなどを共有し、どうすればもっと喜んでいただける店にできるかをみんなで考え、店作りに活かしています」。
そして、まさに「出会いがある。会いたい人がいる」店になりつつあり、店員と話したくて、常連客はカウンター席から埋まっていくのだという。
その時、一人のスタッフの方とたまたま目があったが、一瞬にして笑顔で挨拶された。
それこそがおもてなしである
サービスとおもてなしは違う。
そのことを感じとったお客さんは、週に3、4回来られるという。
女子高生も、ファーストフード店でお茶した方が安いのに、わざわざここで時間を過ごすのだという。
中二階もある広々とした店内では、当日も様々な年齢の方々が、食事をし、お茶をし、ゆっくりと時間を過ごされていた。
外を見れば、中庭でお父さんと遊ぶ子供たちがいる。
小さな幸せが、そこここにある。
「cafe n2」で1月限定のパスタ料理「トマトクリーム海老パスタ」をいただいた。
まろやかな味わいでまとめられたパスタには、蕪や水菜、しめじ、トマト、赤玉ねぎといった、地元で採れた野菜が入っている。
地元のものを使おう。
その心根が、優しい。
食後は、自家製のリンゴのタルトをいただいた。
このほかのケーキもすべて、飲食店未経験の守崎さんが作っているのだという。
「コロナで暇だったので、ケーキ作りを独学して、何度も試作を重ねました」
そう、恥ずかしそうに守崎さんは言われた。
だが一流パティスリー顔負けのタルトである。
そのタルトには、お客様に喜んでいただきたいと心底思い、この街をもっと良くしたいと願う人情の味がしみていて、心を温めるのだった。
高知県四万十市中村天神橋39 Shimanto+Terrace はれのば「cafe n2」にて