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創業71年!王道のビーフシチューから変化球のトルコライスまで 親子三代で営む高知の洋食の名店「コックドール」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2022年10月2日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんことマッキー牧元さんが高知の美味しいお店や生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、創業71年の高知の洋食の名店「コックドール」を再び訪ねてきました。

高知市の洋食の名店「コックドール」では、メニューを開くといつも悩みに悩む、

オムライス、ビーフシチュー、天使のエビフライ、カニコロッケ、ハンバーグステーキ、ハヤシライス、エビグラタン、ポークロースカツ、ポークチャップ…といった洋食界の大スターたちがずらりと並んで手招きする。

それだけではない。

トルコライス、チキンのインド風、パルマ産生ハムのスパゲッティといった変化球もあって、これらを見て悩まない人とはお友達になれない。

そう思うほどメニューが魅力的なのである。

コックドールの常連だったという、瀬戸内寂聴や王貞治、五木寛之や山本一力、渡辺淳一という名士達も、メニュー見ながらさぞかし悩んだんだろうなあ。

よし、今日は今まで食べなかった料理をお願いしよう。

まずはビーフシチューである。

ビーフシチューは、昔ながらの少し甘い味付けで、深いコクとまろやかさが心を捉える。

パンも合うが、やはりここはご飯だろう。

フランス料理を、ご飯に合うおかずとして変化させて来た洋食料理の相手は、特にこの店のような昭和の味を受け継ぐ店では、断然ご飯である。

シチューをご飯にかければ、途端に美味しい。

そして、シチューをあらかた食べたところで、思い切ってシチューの皿の中へご飯を入れて混ぜ混ぜすると、もうたまらない。

野菜類や牛すじで一週間かけてブイヨンのもとをとって作るソースの味わいは、格別である。

次は「ボークチャップ」といってみた。

ケチャップベースのソースだが、甘さに引きずられることなく、品がある。

聞けば、デミグラスソース、ブイヨン、バター、塩胡椒で仕上げていくのだという。

豚肉の脂の甘い香りとソースのエレガントな甘みが共鳴して、これまたご飯が恋しくなる味である。

次は「若鶏の網焼き」といってみた。

網目の焦げがそそられる。

焦香が食欲をそそり、噛めば肉はしっとりと歯に食い込んで、優しい肉汁が滲み出す。

調子が出て来た。

さあ、次は「海老グラタン」である。

グラタンの主役は、海老でもマカロニでもない。

ホワイトソース、つまりベシャメルソースである。

ここのグラタンはそのベシャメルソースがまろやかで塩加減がピタリと決まっている。

グラタンはこの他にシーフードとチキンしかないが、このソースでマカロニを存分に食べたいと思った。

そして美味しいグラタンは、当然ご飯も進むのです。

この「コックドール」は、今年で創業71年になる。

初代の両親は公務員で、かつて追手筋にあった「食通」で修行し、この店は、昭和天皇が高知に行幸され、室戸の「山田亭」にお泊まりになった時に、お料理を作るほどの店だったという。

独立して市内に和食店を構えたが、お客からの支払いが盆暮れのツケ払いであったため、仕入れがままならず、客先を変えて別の場所に洋食店を開いたのだという。

現在の女将さんは初代の奥様である。

今は亡きご主人が好きで、自ら塗ったという白い壁や山小屋風窓が映えて、とても老舗とは思えない、家庭的な雰囲気がいい。

29歳のお孫さんは、東京の名店「小川軒」で修行され帰って来て、今は厨房に立たれている。

親子三代、みんなで東京に行ったら、洋食屋を食べ歩くのだという家族の団結が、洋食がこの上なく贅沢だった古き良き時代の味を、そして時代の誠実を守り続けている。

 高知県高知市帯屋町1丁目「コックドール」にて

 

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