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Back To 高知家の2019!職人の手によって作られる一級品!極彩色の伝統的工芸品「フラフ」

       

この情報は2022年5月4日時点の情報となります。

これまでたくさんの記事をご覧いただいている「高知家の〇〇」ですが、その中でも人気だった記事や、まだまだみなさんにご覧いただけていないおススメ記事を「Back To 高知家の20○○」としてご紹介します!
今回は2019年4月26日にご紹介した、子どもたちの健やかな成長を祈って高知の空を舞う「フラフ」の記事です。
これまでご愛読いただいている方も、初めて来たよという方も、是非お楽しみください!

4月の中旬頃を迎えると、金太郎や桃太郎、武者絵などが描かれた大きな旗を目にする。端午の節句に、男の子の健やかな成長を願って掲げられる「フラフ」だ。フラフは高知県東部地域〜高知市あたりでみられるお祝い飾りで、高知県の伝統産業にも認定されている。

このフラフ、一体どのように作られているのか。高知家の○○取材班は、県内シェア4割を誇る香美市にある染工場へ向かった。

 

ハチロー染工場に潜入

訪れたのは、香美市に3軒ある染工場のうちの1つ「ハチロー染工場」。

店内に入ると、そこには…

「すごい!」

思わず声を発してしまうほど、お祝い飾りの品々がところ狭しと並んでいた。

今回お話を伺ったのは、「ハチロー染工場」の4代目である代表取締役 三谷隆博さん。

-フラフはいつから作られているんですか。
隆博さん:「ハチロー染工場では、明治時代からフラフを作っています。当時は、この辺りに10軒ほど染工場があったと聞いています。今では、3軒の工場が伝統を受け継いでいます。」

-フラフの語源はあるんですか。
隆博さん:「旗」を意味する英語の「FLAG(フラッグ)」や、オランダ語の「VLAG(ヴラッグ)」が土佐流になまったと言われますが、諸説あるようです。」

-フラフは高知特有のものですか。
県外では珍しいですね。県外では、フラフではなく大漁旗を掲げる地域はあるようですね。

今回はお話だけではなく、実際に製作している現場を見せてくれることに。

 

フラフ作りの工程を紹介

「フラフ」は、下絵描き→のりづけ→さし染め→背景染め→色止め→水洗→縫製という流れを経て、およそ1ヶ月から2ヶ月間かけて完成させるという。

作業を順番に見せてもらった。

「のりづけ」の作業を黙々と進めているのは、ハチロー染工場取締役会長 三谷仁志さん。ハチロー染工場で下絵作業ができるのは、仁志さんだけだそうだ。

作業しているフラフのサイズは「3.3m×4.5m」で畳10畳分の大きさだ!

いやいや、これで驚いてもらっては困る。
なんと、最大サイズでは、「4.4m×6.3m」で畳18畳の大きさのものまであるという。

よく目を凝らして見ると、のりづけした部分はぷっくりと膨らんでいる。染め作業の時に染料の色が交ざらないよう、壁の役割しているのだ。

作業中の仁志さんにお話をうかがった。

-この下絵には、どの位の時間がかかりますか?
仁志さん:「このサイズやったら2時間やね。一気に描かんといかんきね。」

のりは、もち米をペースト状にしたものに、塩と微量の消石灰を混ぜているという。その作り方について尋ねると、
仁志さん:「感覚です。湿度に合わせて、粘度をいい塩梅にするのが重要ながよ。

なるほど、職人らしい答えが返ってきた。これまでの経験と、集中力があってこそなせる技だ。

次は、絵柄の細かい部分を染める「さし染」という作業。鎧や兜、城など絵は細かい。それを刷毛(はけ)で染めるのは、職人の技術があってこそ。

ちなみにこちらのフラフ、これでも十分大きいが、完成サイズの3分の2なのだとか。なぜ3分の2のサイズで作成しているのかを、隆博さんに尋ねると、
隆博さん:「手が届かないからです。ひっくり返しながら染めていくのには、このサイズが限界なんです。」

さし染め、背景染めと乾燥を繰り返し、徐々に完成していくフラフ。染めの作業後、しっかりと乾燥させたあとは水洗いの工程へ。

工場裏へと案内されると、そこには水路があった。

これは、江戸時代の土佐藩家老 野中兼山が、新田開発のために建設した「山田堰」の支流である。

「フラフ」ののり落としや、布を水にさらす工程など、フラフ作りには豊かな水が不可欠である。この水路があったことが、この地区で「フラフ」が地場産業となった要因の一つだろうと言われている。

洗ったあとは、しっかりと乾燥させる。

そして最後の仕上げは、分けて染めた生地を縫い合わせる縫製だ。

縫製は、仁志会長の奥様 三谷千鶴(ちづ)さんが担う。大きさを感じさせないほどスムーズな手さばきは、思わず見とれてしまうほど。

こうして何人もの職人の手によって完成したフラフは、一般家庭だけではなく、子ども達がたくさん集まる公園などでも掲げられている。

色合いと大きさだけでなく、バッサバッサと風にたなびく音でも存在感を放っている。

-フラフの絵柄は決まったものがあるんですか?
隆博さん:基本的な17の絵柄がありますが、お客様によっては絵柄からオーダーをされる方もいらしゃいます。お客様の要望に応じて、大きさからデザインまでオーダーメイドで注文を受けています。

-印象的なものでは、どのような絵柄がありましたか?
隆博さん:車やバイクという、お父さんが好きな乗り物に子どもが乗っている絵柄の注文がありましたね。昔は、農家を継いでもらいたいという気持ちを込めて、トラクターに乗ってる絵柄の注文も受けました。

描かれている絵柄の意味を想像しながら、家々に掲げられているフラフを見る楽しみも見つけてしまった。

 

後生に引き継いでいきたい伝統

-今、力を入れていることはありますか?
隆博さん:「昔は、一軒家でおじいさん、おばあさんと同居している家が多かったので、大きいサイズのフラフの注文があったんですが、年々減ってきています。そういった時代の変化もあって、集合住宅のベランダでも掲げることができる「ミニフラフ(1m×1.5m)」の製造にも力を入れています。お客様の要望にお応えできるよう頑張っていきたいと思ってます。」

大切な子どもにこだわりのフラフを贈りたいという家族の思いと、お客様の気持ちを大切にする職人の思い。フラフのたなびく風景が、後世まで受け継がれてほしい。

 

施設情報

有限会社 ハチロー染工場

住所:高知県香美市土佐山田町楠目76番地

電話:0887-53-2276