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「高知県最東端の町で目にも鮮やかアートなこけら寿司をいただく」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2021年4月18日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、高知最東端の町、東洋町でアートな寿司「こけら寿司」をいただいてきた。

もはやアートである。

長細い黄色、丸いオレンジ色。葉形の緑、細い焦げ茶色。

ご飯という白いキャンバスの上に、一見無造作に並べられた彩りが、モダンアートのような様相を見せて美しい。

高知県の東の端っこ、東洋町にやってきた。

高知県人でも100人に1人も来ていないだろうという遠さである。

そこでいただいたのは、この地方に150年前から代々伝わる押し寿司の「こけら寿司」である。

「こけら落とし」という言葉の元になった「こけら」は、木片のことを指す。

押し寿司を作る木型が、木片を合わせて作ったものなので、「こけら寿司」と呼ぶらしい。

入れられる具材は、人参、人参の葉、椎茸、薄焼き卵、焼き鯖と至ってシンプルだが、準備は深夜から始まる。

「昨日から具を用意して、夜の2時にご飯のスイッチ入れて、炊き上がったら塩と砂糖混ぜて、冷めたら一晩柚子酢につけておいた焼き鯖のほぐしたのと、柚子酢を混ぜて、型に詰めて具を乗せ、また型に詰めて具を乗せてを繰り返し、重しを乗せて1時間で完成です」

出来上がったこけら寿司は、ご覧の通りアートである。

早速切っていただいた。

「真っ直ぐ切っちゅうき、偉いねえ」。

高知のおばちゃんはかしましい。

作っていただいた「野根キッチン 」の松本善子さんによれば、昔は一晩押しをかけて、「投げても壊れんくらい」に固く仕上げたという。

白米が貴重だった時代に、お祝いの時は少しでも米をたくさん食べられるようにという知恵である。

婚礼の時は 皿鉢の土台としてこけら寿司を敷いたという。

本日は53キロの重石をのせた。

しっかり押しておけば保存も効くし、お米が潰れて小さくなり、腹一杯食べられる。

厚さも分厚く、女性では頬張れなかったくらいだという。

また型から抜く時には、米から水分が相当抜けるので、ぬきづらく、女性の力では抜けなかった。

さあいただこう。

うむ。この柚子酢が危険である。

自然のまあるい酸味が、いくらでも食べられるように仕向けてくる。

今日の取材、もう3軒目だよ。この後も炭水化物だよと思いながらも、「すいません、もう一個ください」と、止まらない。

時折大きい鯖の身があって酸味が強く、それがまた食欲を加速させる。

これはお寿司のお菓子である。

食べていると、気持ちがほっこりしてくる。

昔の宴会では、6升の米で作り、100人前以上を作ったという。

「夜食べて余ったら、翌日備長炭で焼くと、お煎餅のようにカリッと香ばしくなって、別の美味しさが生まれます」と、松本さんは教えてくれた。

よし次は、それを食べよう。

 

高知県安芸郡東洋町野根丁丙「野根キッチン」にて