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高知は隠れたうどん県だったの巻 第一弾「うどんとタイとの関係」 食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その75

       

この情報は2019年11月10日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

実は高知は、隠れたうどん県である。

そりゃあ、うどん県を公言する香川県には、数ではかなわい。

2016年の県別うどん消費量で香川はダントツ1位であるが、高知は30位と、下位に甘んじている。

しかし街を歩いていると、意外にうどん屋に出会う。

試しに入ってみると、どの店もおいしい。

しかも香川のような強烈なコシではなく、大阪や京都のようなやわな感じでもなく、その両方の良さをとったようなうどんで、妙に親しみが湧く。

そんな店の一つが、高知市内にある「手打ちうどん 藤家」である。

ご覧のように、街並みに溶け込んでさりげなく、特別感があるわけでもない。この日常感がいい。

店に入れば、サービスの女性と料理人の男性と二人で、のんびりとした空気が流れている。

椅子もテーブルも時代が染みていて、親戚の家に遊びに来て「まあうどんでも食べていきや」と言われているような、安堵感がある。

さあ頼んでみよう。

まずは、「ぶつかけ」550円からいってみよう。

初めてのうどん屋では、まず冷たいうどんから食べてみる。

そして実力を理解した上で、温かいうどんに移行する。

これが私なりの、うどん屋鉄則である。

うどんが登場した。

やや角ばったうどんが、つやつやと輝いて、我々を誘っている。いい光景だなあ。

つるるるっ。つるるるっ。

モチっと歯を押し返すうどんは、最初はコシを主張するが、口の中で15回ほど噛むと消えていく。

この辺りが、讃岐うどんと違うところである。

讃岐うどんは、徹頭徹尾コシを強調し、顎が疲れるほど噛み、喉でうどんを味わうことを、至上の喜びとする。

だが、ここのうどんは、そこまでは求めない。

コシは感じさせるものの、中心は柔らかい。

見た目も口も気性が激しくきついが、中身に男を立てる優しさを持つ、高知の女性「はちきん」のようなうどんである。

このぶっかけは、途中から卓上に置かれている柚子果汁をかけるといい。

爽やかさが増して、箸を持つ手が加速し、瞬く間になくなり、お代わりしたくなる。

さあ次は、温かいうどんといってみよう。

ここはこの店ならではの品書き、「タイカレーうどん」といってみた。

おおこれは、グリーンカレー、ゲーンキョワーンではないか。

ズルルルッ。ズルルルッ。

まずはココナッツミルクの甘みとレモングラスやコブミカンの香りがやってくる。

その甘いような酸っぱいような香りが、うどんと合うなあと思った瞬間、辛味がやって来た。

かなり辛い。相当辛い。

一瞬優しく、隙を見せた瞬間殴られる。

これもまた「はちきん」女性の気性かなあと思う風情で、自らに秘めていたM体質が喜びだすのであった。

 

高知市上町1-2-1「手打ちうどん 藤家」にて