高知市はりまや橋を中心に東西南北に走る「とさでん交通」の路面電車。知ればなるほどの豆知識から今年導入された最新鋭車両まで「とでん」の魅力を前後編の2回にわたってお届けする。
「とでん」と言えば、東京では都電荒川線を指すが、高知市周辺に暮らす高知県民にとっては「とさでん交通」のこと。
今回はとさでん交通の路面電車にスポットを当て、その魅力を紹介していこう。
3つの日本一
①歴史が古い!
1904年(明治37年)5月2日に開業したというから、なんと今年で開業114年!現存する日本最古の路面電車なのである。
②路線が長い!
現在の路線は、はりまや橋~後免町間の後免線、はりまや橋~伊野間の伊野線、高知駅前~桟橋通五丁目間の桟橋線の3路線からなり、総延長は25.3㎞。全国数ある路面電車の中で日本最長の路線距離を誇るのだ。
③駅と駅の距離がめっちゃ短い!
高知市の東部にある清和学園前~一条橋間の駅間距離はたった63m。
一条橋を発車した電車は…
あっという間に清和学園前に到着。時間にして10秒もかかっていない。
もともと一条橋の電停が先にあったのだが、後からできた学校のより近くに電停を設けたことでこの最短区間が生まれたとのこと。それにしても近い…。
日本初の取り組み
桟橋線の桟橋通一丁目~桟橋通二丁目間の軌道敷には芝生が植えられている。
今や全国の路面電車に広がったこの「軌道緑化」は、実は全国で一番初めにこの区間が完成したという。ヒートアイランド現象にも有効なエコな取り組みなのである。
必見!全国的にも珍しい2つの光景
①路面電車ではここだけのダイヤモンドクロス(平面交差)
鉄道の線路同士が斜めや直角に交わることをダイヤモンドクロス(平面交差)と言う。
上から見るとこんな感じ。
その中でもほぼ直角に交わっているところは、ここはりまや橋を含め現在では全国3ヶ所しかなく、しかも路面電車同士は全国唯一というからかなりレアな光景だ。
ここ最近、ネットやテレビ・新聞などでも取り上げられるなど、その光景の希少さからじわじわと注目度が高まっているホットな場所。ぜひその目で確かめてほしい。
②こちらも路面電車ではここだけ!タブレット交換
タブレットとは、単線区間での電車同士の衝突を防ぐためのいわば「通行手形」のようなもの。「通行手形」を持った電車のみがその区間を走ることができるため、行き違いができる場所でその「通行手形」を交換するという仕組みだ。
ここはいの町の八代通~中山間にある行き違いができる場所。
いの行きの電車とはりまや橋方面に向かう電車がやってきて…
運転士がお互いにタブレットを交換していく。
数十年前までは全国のローカル線で見られた光景だが、安全運行の仕組みが日々進化する中で現在も残っているのは全国でも珍しく、路面電車ではここだけでしか見ることができないのだ。
素朴な疑問
今回の取材でお話を伺ったとさでん交通株式会社 電車事業部 電車企画課長の恒石さんに、取材班が抱いていた“素朴な疑問”をぶつけてみた。
記者:電車の行先表示についてなんですけど、どうして「いの」「ごめん」とひらがな表記なんでしょうか?路線図を見ると正式には「伊野」「後免町」だと思うのですが…。
恒石さん:さて…。もうずいぶん昔からなんじゃないでしょうか。私、昭和54年入社なんですが、その時は既にひらがなでしたので詳しいことはわかりませんね…。
記者:そうなんですね…。
昔の資料の写真を見ると、昭和20~30年代には既にひらがな表記が使われていたことが確認できるのだが、結局のところ真相はわからなかった。
恒石さん:ちなみに、私が入社した昭和50年代は今よりも学生さんの利用がもっと多くて、電車も昭和62年までは2両連結で走っていたものもあったんですよ。
記者:すごいですね。今はハートラム(※3両連接の低床車両)以外は全部1両ですよね。
恒石さん:はい。しかも道路の渋滞が今よりひどくて、車が線路上で渋滞の車列を作るもんだから、そこに電車もハマって動けないなんて事もしょっちゅうありました。
記者:今は渋滞の車列を横目に電車はスイスイと走っていきますからね。道路の環境も随分変わったのですね。
恒石さん:そうなんです。
まだまだ話は尽きないが、今回【前編】で紹介した路面電車の豆知識に続いて、次回の【後編】ではユニークでバラエティ豊かな車両を紹介するのでお楽しみに!