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【高知家の後継者募集】県内外のお客さんに愛される絶品鍋料理の味を引き継ぐ 高知県の小京都・四万十市「ちゃんこ土居」

この情報は2025年7月30日時点の情報となります。

ここは高知県四万十市の中心部、中村本町。

商店街のそばに立つ鳥居をくぐって、石段を上る。

初夏というにはあまりに暑すぎる日差しに、すぐにポロシャツは汗ばんできた。

小高い丘の頂上には、「小京都」を象徴する一條神社が柔和な趣で佇んでいる。

一條神社は土佐一條氏の祖先神と一族を祭る社で、県西部・幡多地域の守り神的存在。

「いちじょこさん」と呼ばれるなど地域住民に古くから親しまれている。

参拝を済ませて階段を下っていると、心地よい涼風が火照った身体を少し冷やしてくれた。

ちょっとした参拝のご利益だろうか。何となく地域に迎えられているような気持ちになり、これから向かう飲食店への期待感も膨らんで来る。

お目当ての店は一條神社のすぐ近く、歩いて1分ほどの場所にあった。

店の玄関には飾り瓦があしらわれ、緑の暖簾には、相撲の軍配と綱が染め抜かれている。

地元住民に長年愛されてきたちゃんこ料理の名店、「ちゃんこ土居」だ。

「暑かったでしょう。でも、こんな時に熱いちゃんこを食べると、元気が出るけんねえ」

女将の土居和美さん(82)が柔らかな抑揚の幡多弁で迎えてくれた。

さすが「小京都」と言われるだけあって、言葉のイントネーションは京都に近く、力強い「土佐弁」とは正反対である。

なぜ、同じ高知県でこんなにも言葉が違うのか。その理由は室町時代に遡る。

応仁の乱の戦火を避けるため、時の関白、一條教房はこの地に中村御所を構えた。

以後、子孫は土佐一條氏として幡多地域を治めていた。このため、京都風のイントネーションが地域に広がったという説があるそうだ。

同店は、県内アマチュア相撲界で活躍した和美さんの夫、故・土居 陽(あきら)さんが47年前に開業した。

近畿大学在学中に相撲部のちゃんこ番で培った秘伝の出汁が金看板。

開店当時から地元住民を中心に大勢の客が訪れ、長年親しまれてきた。

メニューは具材の豪華さによって横綱、大関、関脇の3ランクあり、味付けはソップ(しょうゆ)、みそ、塩、水炊き(ポン酢)の4種類。

値段は「開店当時から変えていない」そうで、最高ランクの横綱でも一人前が2,500円と超良心的だ。

横綱ソップを注文して、しばし店舗内を見回すと、高知県出身の大関、朝潮と陽さんが一緒に映った写真などが飾られている。

近畿大の繋がりで、朝潮が後輩にあたるということで、店に来てくれていたそうだ。

配膳された皿鉢には、安い値段と釣り合わないような豪華な鍋の具が満載。

「こんなに食べられるのか」と思うほど量も多い。

具材を丁寧に鍋に運んで蓋をする。煮立つまでの時間が待ち遠しい限りだ。

頃合いを見計らって、蓋をとると、湯気と共に食欲をそそる香りが広がる。

まず、出汁の味を堪能する。

あっさりしていながらも、深いこくを感じる。さすが地元で愛され続けている味だ。

こうなってくると、具材は添え物の感さえしてくる。

箸はどんどん進む。気が付くといつの間にか、鍋はほぼ空っぽになっていた。

この味を求めて、地元を中心に県内外から常連客が押し寄せる。

ハレの日に来店する家族も数多い。

県外客に正月用として「ちゃんこセット」を発送するほどの人気ぶりだという。

長年愛されてきた店なのだが、2年前に夫の陽さんが他界、和美さんも店を切り回すのが辛くなってきた。

親族で継いでくれる適任者はおらず、店を畳むことを考え始めたのだそうだ。

「でも、お客さんから、辞めないで欲しいという声をたくさん頂いて。ちゃんこの味をなくさないでと言われるんです。だから、この店と味を誰かに引き継いでもらいたい」

そこで、全国の人を対象にネット上で後継者を募集することにしたそうだ。

店舗の引継ぎ条件で譲れないのは、「ちゃんこの味を残す」こと。

逆に言えば、店を引き継げば、地域が愛する秘伝の味が受け継げるということだ。

地域内には、他にちゃんこ料理の競合店はなく独占状態。

常連客の存在も味と共に受け継げるだけに、これから事業を始める方にとっては好条件だ。秘伝のレシピだけの売却も相談に乗るという。

相撲の起源は、神様に捧げるための舞だったという説があり、今でも神社とは深い縁がある。

一條神社のお膝元で、50年近くもの間、地域に愛され続けてきたちゃんこ店は、「いちじょこさん」の加護があったのかもしれない。

この味を未来に残す承継者には、きっとその加護も受け継がれるような気がしてならない。

店舗情報

ちゃんこ土居

高知県四万十市中村本町1丁目12

 

経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。

高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。

「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。

このコーナーは、事業を譲りたい人と受け継ぎたい人を繋ぐ連載です。

高知県事業承継・引継ぎ支援センター

電話:088-802-6002

メール:kochi-center@kochi-hikitsugi.go.jp 

担当:谷、野本

 

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