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一軒家の隠れ家でしっぽりと過ごしながら上質な食材と酒で酔う高知の夜「草や」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その82

       

この情報は2020年1月5日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

高知で静かな夜を過ごしたい。そう思うと「草や」に行く。

高知市内の繁華街から少し外れた閑静な住宅街に、「草や」はある。

庭付き一軒家を改築した店で、塀に囲まれた玄関に下げられた千草色の長暖簾が清々しい。

ガラス戸を引き、玄関で靴を脱ぎ、居間に入る。20畳はある居間には、木のテーブルと椅子が置かれている。

その一つに座り、まず酒を選んだ。

土佐酒造の桂月ナチュールにしてみる。

農薬や化学肥料を使用せずに栽培された山田錦を使い、生酛仕込で仕込んだ純米大吟醸だという。

透明感のあるエレガントな香りが鼻腔をくすぐり、優しく丸い味わいが舌を滑る。

心地よい夜の始まりとなった。

手書きされた品書きを見る。

本日の鮮魚とあり、カツオ、キンメ、アジ、ハマチ、ウルメ、トビウオ、熟成ウツボと記されている。

肉は窪川ポーク、あかうし、土佐ジローで、ツガニ汁ありますと書かれた赤字も見逃せない。ううむ悩むなあ。

悩み悩んで数品頼むと、酢蓮が運ばれた。

桂月でゆっくりやっていると、お造りの登場である。

選んだのは、ハマチとウルメイワシの刺身だった。

直七を絞り、醤油にもつけるが、ニンニク葉のヌタを絡めるのもいい。

どちらも高知特有の食べ方である。

ウルメイワシも良かったが、脂に品の良さを感じるハマチが素晴らしい。

続いては、「四方竹天ぷら」で、香り高く、シャクシャクと噛んでゆくと甘身がにじみ出る。

ここで、「漬物盛り合わせ」や自家製アンチョビドレッシングとチーズをかけた、「温野菜サラダ」と、力強い高知野菜を頬張る。

そして待望の「ツガニ汁」が来た。

これも高知特有の郷土料理で、秋になると県民の皆が食べたくなる料理である。

仁淀川など淡水域で獲れるツガニ(藻屑蟹)を叩き潰し、水や醤油、酒、味醂などを入れ、野菜も煮て汁仕立てにした料理である。

ひろめ市場でも季節には出す店があるが、それに比べてこちらのツガニ汁は、品がある。

吸い口に青柚子が添えられ、リュウキュウ(ハスイモ)とナスが入っている。

内子の旨味にふわふわとした肉の優しさがあり、そこへ煮たそうめんがからむ。ううむ。また秋になったら食べたいな。

次はガラリと趣向を変えて、「窪川ポークのブタキムチ」に「放し飼い卵の出汁入り玉子焼き」といってみた。

豚肉と野菜が入ったキムチは、その発酵臭が肉の滋味を持ち上げ、おいしい。

湯気を上げながら運ばれた出汁入り玉子焼きは、素直な味わいである。

ここで再び肉攻撃をかけて、「土佐ジロー醤油麹焼き」といってみた。

仏手柑をたっぷりかけて頬張れば、肉に躍動感がある。

噛みごたえがあり、噛むごとに滋味が湧き出る鶏肉と醤油麹の練れた味が、よく合う。

あまりに美味かったので、食べ比べたいと思い、「はちきん地鶏の塩麹焼き」も頼んでみた。

こいつは、鳥の香りがいい。よくあるように、舌にこびりつかずうまい。

そして「玉子寿司」。

薄焼き卵と酢飯を巻いたシンプルな寿司だが、ほのぼのとする美味しさがある。

最後は、自家製アンチョビの上澄みとダシ入り「土佐ジローの卵チャーハン」といってみた。

アンチョビの上澄みが色気を付け加え、土佐ジロー特有の強い甘みと米の甘みが抱き合って、もう一口食べた瞬間に、笑い出す。

酒をけっこう飲んだが、収まりがつかない。

よし。この静かな夜のシメには、オーク樽で熟成させたという濱川商店のライスグラッパを飲んで眠りにつこう。

 

高知県高知市鷹匠町「草や」にて