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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2024年4月28日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすフードジャーナリスト「美食おじさん」ことマッキー牧元さんが、高知の料理店・生産者さんをめぐる「高知満腹日記」。今回は高知市のフレンチ「balloon」にお邪魔してきました。
高知に移住してくる料理人は、高知県人の親密さと食材の豊かさに惚れてくるケースが多いことは、以前書いた。
高知市内の住宅街で店を開くフランス料理「balloon」のご主人もまたそうである。
妻が高知だったこともあり、東京出身の彼は5年前に高知に店を開くと決めて、2018年12月からやられている。
東京時代は、白金から現在は恵比寿に移転している「オーギャマンド トキオ」や、乃木坂のビストロ「ルブトン」で働かれていたというから、自由闊達でお客さんを喜ばす料理を作られるのだろう。
オープンキッチンで次々と仕上がっていく料理は、そんな想像をさらに超えて、胸を沸かし、食べるごとに食欲が増していく、そんな料理だった。
「芋けんぴです」。
突き出しからこうきたか。
けんぴといえば、砂糖と小麦で作った硬い硬い菓子である。
【記事】「日本一固い菓子」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記
最近はそれをサツマ芋に変え、細切りして揚げ、砂糖をまぶしたものが主流となっている。
この店の芋けんぴは、「フォアグラ芋けんび」だという。
バルサミコと砂糖と塩で、飴炊き風芋けんぴを作り、フォアグラ を挟んである。
これが実に面白く、純粋においしいのである。
いま、レストランではフォアグラ を挟んだモナカというのが頻繁に出されるようになったが、そのアイデアから脱却しているのもいい。
食事の最初に、このような料理を出されると、今後の皿に期待が高まる。
続いては「菊芋のフラン」が運ばれた。
口の中でゆっくりゆっくりと、菊芋の穏やかな甘みが開いていく。
余計な旨味が無いのがいい。
菊芋の純粋な甘みだけで、心が洗われる。
続いての前菜は、「しめ鯖とクレソンのサラダ」だった。
シーザーサラダドレッシングとチーズであえてあるが、酸味とうまみのバランスがよく、 塩味も弱くて鯖もクレソンも活かしている。
しめ鯖の切った厚みが、これ以上でも以下でもない絶妙な厚さであり、クレソンのほろ苦みと出会って、サバの脂の甘みが膨らむ。
次に、「白甘鯛焼きとカブのスープ」が運ばれる。
骨でとったスープとカブを煮出したものに焼いた白甘鯛が置かれていた。
カブの味がスープに滲んで、優しい気分を運んでくる。
塩気が精妙で、舌にあたらない。
その中で白甘鯛の上品な滋味が、ゆるりと伝わってくるエレガントな料理である。
自家製パンドカンパーニュが運ばれた後には、「牛ハチノスと菜の花のソテー」が出された。
ジャガイモのピュレに少し白麹を足して、甘みを出したのだという
それがなんともハチノスと合うのである。
続いての魚料理は、一口食べた瞬間に笑ってしまった。
「オマール海老のコロッケ」だという。
地元の活きのいい小エビをベシャメルソースと回したものをオマールで包んで揚げ、自家製ウースターをかけてある。
凝縮した海老の甘みに顔がほころぶ。
自家製ウースターの角が取れた甘辛味が、その甘みを後押しして小躍りしたくなるような楽しさがある。
口直しに、金冠シャーベットを挟み、肉は数種類からどれかを選べという。
これが困った。
そのラインナップは、自家製ハンバーグ、四万十ポーク、ハラミステーキ、高知県産鹿、高知県産猪である。
悩みに悩み猪をお願いする。
一面ロゼ色に焼き上げられた肉が美しい。
「ううう」。
噛んだ瞬間唸り声を上げてしまう。
躍動感があって、素晴らしい。
みなぎる生命力が口の中で爆発してコーフンする。
鼻息が荒くなり、気分が上気する。
そんな肉料理である、
聞けば、藁で香り漬けをし、塩はキノコや昆布と炊いて複雑な味わいにしているのだという。
デザートをいただきながら思う。
どれも料理の完成度が高く、独創性もある。
それでいながら、自分が出ることなく、食材の持ち味を素直に活かして、てらいがない。
また一軒、高知に来るための店を知ったことを、感謝した。
高知県高知市吉田町2-10「balloon」にて