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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2023年8月6日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、テレビ、ラジオ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知県土佐市で素晴らしい庭園と料理が楽しめる「茶亭たかせ&器Gallery茶々」にお邪魔してきました。
カコーン。
カコーン。
苔むした庭に、鹿威しの音が響き渡る。
目の前には、飛び石が配され、白川砂利で整えられた枯山水の庭が、広がっている。
素朴で、慎しみ深い庭が、心をゆったりと座らせる。
ここは土佐市高岡町にある「茶亭たかせ&器Gallery茶々」である。
週末だけ営業する茶店と器のギャラリーを併設した店を、高瀬さんご夫婦が営まれている。
立派な家屋は、祖父母の時代から受け継いだ築90年の古民家をリノベーションしたのだという。
畳の和室には、堂々たる木柱に、昔の丁寧な仕事が見て取れる欄間があり、炉が切られ、床の間を配した茶室が設けられている。
そして外には、見事な庭園が広がる、
ご主人は、庭師に頼むことなく、京都の名庭園などを見て周り、自らの手で時間をかけて作られたという。
相当な凝り性である。
先ほどから心地よい音を響かせている鹿威しもまた、手作りされたという。
かなりの凝り性である。
そんな方が作る料理やデザートは、素晴らしいものに違いない。
いただく前から期待が高まっていく。
当日は2種類の食事と、2種類のかき氷をいただいた。
本来なら食事からご紹介したいのだが、ここはかき氷から書かせてもらうことをお許しいただきたい。
一つ目は、抹茶のかき氷である。
洒落たガラス器の中には、抹茶色の氷がこんもりと守られ、バニラアイス、栗の甘露煮、小豆あん、白玉が添えられている。
氷を食べて、目を丸くした。
抹茶をいただいた時と同じ、濃厚な茶の香りと渋み、甘みがあるではないか。
普通冷たいものは、温かいものと違って、香りや味わいは落ちる。
舌や鼻が、感じにくくなるためである。
それなのに、この香りや味わいはなんということだろう。
今まで数多くの抹茶かき氷を食べてきたが、風味の強さが頭抜けている。
聞けば、宇治小山園 のお茶をそのまま凍らせ、さらに茶のシロップをかけたのだという。
ふんわりとした氷もいい。
優れた機械で削っているのだろう、鼻がキーンとなることなく、口の中でさらりと溶けて、余韻に茶の風味が漂う。
氷だけではない、小豆あんも豆の優しい香りがあり、白玉は羽二重のように滑らかさがあり、栗は栗自体の甘みが生きている。
すべて、丁寧な仕事が生きた自家製である。
続いて、1日限定5色だという生マンゴーのかき氷が運ばれた。
おお。マンゴーシロップがかけられたかき氷には、カットされたマンゴーが、これでもかとゴロゴロと乗っている。
甘みが品がいい。香川の乙姫マンゴーである。
シロップも甘みのバランスがよく、マンゴーの香りが口一杯に広がっていく。
時折、田野町松崎冷菓製のバニラアイスを食べて舌をリフレッシュさせ、またマンゴーの山に挑む。
マンゴーシロップをスプーンに注ぎ、その上に氷をのせて食べてみた。
ああ。目をつぶれば、たわわに実ったマンゴーの果樹園に立っている。
そう思わせるほどの、香りに満ちたかき氷であった。
細部まで思いを巡らせたかき氷からもわかるように、料理もまた素晴らしい。
いただいたのは、「すまし出汁のお雑煮とご飯セット」と、五食限定の「鶏つけ汁蕎麦」である。
「すまし出汁のお雑煮とご飯セット」は大きなお椀に、たっぶりと張られた味深い汁の中には、土佐山田の農家がついた杵つき餅に、鶏つくね団子、卵、花切り人参、麩、椎茸飴煮、青菜、三つ葉などが入れられた雑煮である。
汁をいただけば、体の力が抜けていくような優しさがる。
具はどれも仕事が行き届いて、田舎のおばあちゃんが愛情込めて作った雑煮を食べている感覚が訪れる。
これに天むす、漬物、ナスやキュウリのおろし和えがついて、お腹も心も満たされる。
こっくりと濃い、鶏のうまみが溶け込んだつけ汁につけて食べる、細うちの蕎麦もいい。
こうして整えられた中庭を眺めながら、美味しい食事をいただく。
なんと贅沢な時間だろう。
都会で染みついた日々の速度が緩み、仕事でかいた汗が抜けていく幸せが、体の中に満ちていく。
高知県土佐市高岡町甲「茶亭たかせ&器Gallery茶々」にて