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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2023年5月21日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知の人気観光&グルメスポット「久礼大正町市場」で日曜だけお店を出すおばちゃんとこで「冷麺」をいただいてきました。
夏が近づくと、冷やし中華が無性に食べたくなる。
先日の日曜日、高知県中土佐町の久礼大正市場を市場事務局広報の久竹庸代さんと一緒に歩いていた。
すると彼女が突然、通りで出店しているおばちゃんに声をかけた。
「冷麺まだある?」
「一個だけあるよ」
「じゃあ取っておいて、後で買いに来るから」
もう気になって仕方ない。
聞いてみた。
「冷麺て、なんですか?」
「ああ、いわゆる冷やし中華です。杉村さんの冷麺は本当に美味しいんです。久礼で売っている食べ物のベスト3に入ると、私は思います」。
そこまで聞いたからには、黙っていられません。
「たいへん申し訳ないのですが、その取り置きをしてもらっている希少な一個を、譲ってくれませんか」。
「どうぞどうぞ、わたしはいつでも買えますから」。
久竹さんは、優しい笑顔で譲ってくれた。
あぁ、食いしん坊の希望をかなえてくれて、ありがとう。
帰り際におばちゃんとこへ寄って、買った。
300円である。安い。
錦糸卵と千切り胡瓜、地元の久礼天(魚のすり身の揚げもの、高知では天ぷらという)が添えられ、タレがビニール袋に入っている。
「このタレが美味しんですよね」と、久竹さん。
あなたの一食分の楽しみを奪って、ごめんなさい。
早速、目の前の休憩スペース、「ぜよぴあ」で食べた。
タレをかけ、麺をほぐし、よくよくかき混ぜる。
スズーッ。スズーッ。
麺を一気にすすったら、箸が止まらなくなった。
なんだこれは?
妙にうまい。
冷やし中華のようだが、どこか違う。
タレの甘酸っぱさは同じだが、どこか食欲の本能に訴えかけてくる力がある。
普通の冷やし中華より甘いだろう。
だが甘さがくどくなくて、妙に後を引く
初めて食べるのに、懐かしさがある。
冷やし中華に、土佐のおばちゃんたちの人情を入れた味である。
帰り際におばちゃんに声かけた。
「冷麺おいしかったです」。
「ありがとう。タレが美味しいきねぇ」。
そう言って、優しい笑顔で笑う。
「嬉しいから、これあげるわ」と、鯖寿司をいただいた。
300円の冷麺を買って、500円の鯖寿司もらってしまったのである。
聞けば、高知の人あるあるだという。
気風がいい、人情味の深い土地なのだ。
その鯖寿司は、ご飯にも細かくした鯖が入っていて、柚酢が爽やかを運んでくる味わいだった。
杉村喜美子さんは76歳、20年もここで日曜日だけ店を出しているという。
鯖寿司も冷麺も、食べた後に心がほっこりと温かくなる。
それは、すべての人を受け入れる、杉村さんの笑顔を食べているような味だった。
高知県高岡郡中土佐町久礼にて