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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2023年3月12日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知家の〇〇の2000記事公開記念企画「マッキーさんが高知に来たら必ず訪れたい店」の第三弾として、高知市のオーセンティックバー「フランソワ」をご紹介します。
高知市内で散々美味しいものを楽しんで、さあホテルに帰ろうかという時、どうしても寄りたくなるバーがある。
道路にさりげなく、「GUINNESS PUB フランソワ」の看板を掲げ、FRANCOISと記されたアール・デコ調のガラス窓が、待ち構えている。
木の扉を引くと、右手にカウンターが伸び、左手にベンチシートが配されている。
長年の客の愛着と酒が染み込んだ店内に「いらっしゃいませ」と、店主バーテンダー三好 誠さんのバリトンヴォイスが響く。
その心地よい声を聞いた途端に体がほぐれ、まだ酒を飲んでいないのに、安堵感が広がっていく。
「お腹いっぱい食べてきたので何か、そうだ、フェネルブランカはありますか?」と聞くと、マスターは答えられた。
「いえ、それはないので、イエガーマイスターかウンダーベルグではいかがでしょうか」。
「ではイエガーマイスターをください」。
「そのままお飲みになりますか? ソーダで割られますか? それともカクテルにしますか?」と、聞かれたので、
「カクテルでお願いします」と、頼んだ。
イエガーマイスターを使ったカクテルとは珍しい。
すると、高知の柑橘である文旦を漬け込んだウォッカと、文旦のジュースとイエガーマイスターをステアして出してくれた。
食欲増進のお酒として、甘苦い、飲み薬を感じさせる酒だが、それが文旦の力を借りて爽やかに変身している。
今の気分に丁度いい。
このようにフランソワでは、その日の気分にピタリと添ったカクテルを作ってくれる。
「フランソワ」の創業は、1965年、東京オリンピックの翌年で、カラーテレビが登場し、皆がプロレスに熱狂し、アイビールックが流行り、加山雄三の「君といつまでも」がヒットしていた時代である。
引退された初代のマスターは、ずいぶんな遊び人だったという。
毎晩毎晩、何軒も飲み歩いていたが、全てツケで、支払いは母がしていた。
同じ月に同じキャバレーから、何枚も請求書が届く。
それを見たおばあちゃんが、「1ヶ月は何日やったかね?同じ日の請求書が何枚も来ちゅうけんど」と、突っ込まれたほど、飲み歩いていたらしい。
あまりの飲みっぷりに、「それだけ飲むなら、自分で店やったらえいやんか」と言われたのが、飲食店を始めるきっかけだったという。
おじいちゃんからは、「やるなら鰻屋にしろ」と、勧められたが、しんどそうなのでバーにした。
「フランソワ」という名前は京都の老舗喫茶店から取った。
岡本太郎ほか、数多くの文化人が訪れた喫茶店である。
バーは、多くの人から愛された。
そのバーで、学生時代にアルバイトを2年間していたのが、現在の二代目の三好さんである。
卒業後、 会社勤めをしていたが、98年31歳の時に転職されたという。
今度はサイドカーをお願いした。
パリの「ハリーズバー」で生まれたこのカクテルは、コニャックとホワイトキュラソー、レモン汁を混ぜたカクテルである。
だがマスターは一捻り、コニャックはフラパンを使用し、コアントローブラッドオレンジとキュラソーをシェイクして注いでくれた。
シェイクするときに、オレンジのスライスを入れている。
コニャックの厚みがありながら、単純なオレンジではない色気がある
甘みと酸味のバランスが良く、後味も綺麗に消えていく。
すっかり気が良くなって、今度はウィスキーを頼むことにした。
実はマスター、古いウィスキーも集められている。
取り出したのはサントリーのロイヤルであるが、ロイヤルの下に12と書いてあるところから、年代は24年前、僕が43歳の時の酒である。
古いウィスキーを集められているのは、大量生産の時代でなかったからである。
もちろん変わってないウィスキーもあるが、マスターいわく「昔の方が樽感や複雑味がある。今のものは“たっすい”です」。
それは僕がここに来る理由でもある。
古いウィスキーやカクテルが美味しいだけではない。
マスターの立ち振る舞いや何気ない話、そして年を重ねた店の空気に、若い店にはない、重厚で複雑な味わいが得られるからなのである。
その味わいをウィスキーやカクテルと合わせる。
すると、どこにもない酒が生まれ、心を豊かにするのである。
高知県高知市追手筋1丁目「フランソワ」にて