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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2022年5月29日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は地元民LOVE&人気の焼とん店「にこみちゃん」を訪ねました。
「おひとり様3杯まで」
高知市内の焼きとん屋の「にこみちゃん」に入ると、そう書かれた酒があった。
焼酎、日本酒、ハイボール、電気ブラン、紹興酒に赤ワイン、泡盛に各種焼酎ハイと多彩に揃えたメニューの中で、それだけが異彩を放っている。
「おひとり様3杯まで」と但し書きされているのは、「焼酎梅割り」と「焼酎ゆず割」である。
梅割りは、東京の居酒屋の名地である立石の有名な焼きとん屋などで飲まれているやつだろうか?
それは小さなコップになみなみと焼酎を注ぎ、その上から表面張力いっぱいまで、甘酸っぱい梅エキスを注いだ飲み物である。
焼酎そのものであるのに、甘酸っぱいので飲みやすい。
大変危険な飲み物である。
たぶん「焼酎梅割り」はそれと同じものだろう。
しかし、ゆず割とはどういうことか。
そこで聞いてみた。
農家が絞った、塩が入っていない新鮮なゆず果汁を、宝焼酎で割ったものであるという。
それは旨そうである。
さらに聞いてみた。
「この三杯までというのは貴重だからですか?それとも強いからですか?」
「はい。その強い方です」と、穏やかな、人の良さそうな主人が答えた。
「焼酎ゆず割」を、飲んでみた。
飲み口が爽やかで軽く、酒を飲んでいる感が薄い。
しかしこいつは後から急にくるのだという。
「もう何人も骨折してます」と、平然と彼は言い放った。
「骨折どころか、近くの大川に飛び込んだ人もいます」。
「えっ。三杯でもなっちゃうんですか?」
「いえ常連の方に、もう一杯もう一杯と粘られまして」。
人のいい彼のことだから、断りきれないのだろう。
でもこのゆず割で食べるやきとんは、たまらないのだな。
ルーメンという名前のミノの端っこは、食感クニュっとしてクセになる。
豚の軟骨入りつくね「たたき」は、コリリとして実に美味しい。
シロタレは、脂の甘みとタレの甘みが仲良く抱き合って笑いを呼び、テッポウは醤油味のからさで食べるなんざあ、憎いねえ。
更に煮込みは、牛ずじギアラと小腸 こんにゃくを煮込んだもので、三種類の味噌を使って深みと丸みを出している。
という具合に、食べ始めたら、今日はもう5軒目だというのに、勢いがついて止まらなくなった。
作り置きしていないという、プリプリの馬レバーでのけぞりながら、隣の人が食べていたのをみて美味しそうだったので、締めのカレーも頼んでしまった。
最後に聞いてみた。
「なんで店名がにこみちゃんなの?」と聞くと、
「煮込みの店をやりたいって妻に言ったら、その時妻は酔っ払っていて、それならにこみちゃんてつけたらと言われたんです」。
押しに弱いタイプなのね。
「やきとんおいしかったです」というと、
「ありがとうございます。僕、『宇ち多』が憧れなんです」。
別れ際に彼は、恥ずかしそうに東京立石にある名店の名をあげた。
いや高知市には、希少でおいしいにこみちゃんがあるよ。
高知県高知市南はりまや町2丁目「にこみちゃん」にて