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「シイタケの母に恋をした。」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2018年11月4日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

「シイタケの母」と呼ばれる人物が、高知にいる。

「宗安寺きのこセンター」の大坪久仁子さん(75)である。

農業をやられていた大坪さんが、なぜ未知のキノコ栽培を始めたのか? 聞いてみた。

「目新しいものが好きなんです。雑誌に菌床からキノコができることが書いちょったき、これなら自分でもできそうやねと。元々畑で草むしったりするのは好きじゃなかったしね」と、淡々と言われた。

シイタケの菌床栽培を始めたのは、1982年。

だが当時の高知県では、栽培技術が確立されていなかったという。まったくノウハウがない。

そのため県外視察などを頻繁に行い、独自の理論で栽培技術を学んだ。しかし道のりは簡単ではなかった。

「何回も教えを請いに、全国に出かけたがよ。教えてくれる人もおるけど、教えてくれん人もおる。中にはわざと違うこと教えて、騙す人もおった」。

かなり苦労されたのではないか。だが彼女は明るく言う。

「誰よりも一番最初に、物事を始めるというのは、楽しいことやき」。

ようやく習得した大坪さんが軌道に乗り始めたのは、数年後に近くに高速道路が通ってからである。

高知市内まで早く運べるようになり、高知市の日曜市に出したところ、その味の良さに評判を呼んだ。

そのシイタケを食べてみた。

焼いた肉厚の椎茸にかじりつく。

シイタケのエキスが、一気に滴り落ちる。

いや流れ込むと言ったほうがいいかもしれない。それほどみずみずしい。

森の香りが爆発する。鼻に抜け、体の隅々へ染み渡る。

なにかこう、菌の精に取り憑かれて、体が浄化していく気分となる。

長い間椎茸を食べてきたが、こんな神々しい気分になったのは初めてかもしれない。

「朝5時から作業して、9時には出荷する。大抵は昨日とって、次の日に出荷する。

1日越したシイタケは、糖度が落ちる。水分も抜ける。目方も減る」。

さらに秘密はそれだけではなかった。

「出荷前に30分日光に当てるがよ。日光浴するとビタミンDが増えるき」。

さすがシイタケの母である。

味と栄養のベストを研究し、最善を尽くされている。

さらにこの土地がいい。

「ここは工場もないし、水も空気もえい。キノコづくりには最適」。

今では、シイタケだけでなく、なめこやキクラゲも作っている。

次々と調理したキノコを出してくれた。

だが、その中に、聞いたこともない見たこともない、謎の物体があった。

食べれば驚くほど、味が濃密でおいしい。

その話、「キノコの卵」の話は次号にて。