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【高知グルメPro】ローカル感満載!常連客に愛される大衆居酒屋6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2024年6月22日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回はお茶漬けと美味しいツマミとお酒で地元民や観光客に人気の「お茶漬けの店 たにし」にお邪魔してきました。
「たにし」はお茶漬けの店である。
しかし、ここで必ず頼むのは、この「玉子焼き」。
「たにし」の「玉子焼き」は、卵の溶き具合がいい。
白身を黄身に溶きすぎず、焼いてもまだとろんとなった白身が、いい味を出す。
火が通って甘みが増してたくましくなった黄身に、少しゆるくて味がない白身。
その対比が、凛々しさと緩さを併せ持つ人間模様に似て、ホロリとさせられる。
そこへニラが高く香って、酒を飲ますのである。
お母さんが作った料理と料理屋が作るそれとの、アマとプロとの、ちょう中間辺りという、絶妙な間具合が、実によろしい。
「たに志」は、高知市の繁華街、飲食店が集中した帯屋町の路地にある。
「家庭料理とお茶漬けの店 たに志」という看板を灯し、入り口横には「おでん」と書かれた提灯を下げている。
店をやられて52年になるいう。
もともと別な方がこの場所で店をやられていたのを譲り受け、お茶漬けの店を始められた。
今はなき初代は、谷脇志郎さんという方で、ご主人の名前から店名をつけたのだという。今は初代の奥さんである女将さんが、息子さんとともに店を仕切られている。
いつも和装の割烹着姿で接客され、物腰柔らかく、チャーミングな女将さんを目当てで来るお客さんも多いと聞く。
名前をお聞きすると、
「良子です。良子の良は、不良の良ね」と、笑われた。
失礼ながら、お年を聞くと
「私? 忘れちゃった。息子は50だから想像してね」と、可愛くかわす。
納豆を頼むと、生卵をとふわふわに泡だて、上に海苔をたっぷり乗せて運んできてくれた。
こいつは燗酒が進む。
玉子焼きと納豆を食べたら、先ほど夕飯を食べたばかりだというのに、お腹がすいてきた。
この店に来ると、いつもそうだ。
肴を一つ食べるたびにお腹が空いていく。
特に珍しい料理があるわけではない。どこにでもある惣菜が中心なのだが、味の芯に人情が染みているので、お腹が空いちまう。
勢いで「鳥肝煮」と「串カツ」を頼んでしまった。
甘か辛く煮た鳥肝煮は、肝の甘みと味付けの塩梅がピタリと決まって、口元が緩む。
かたや串カツは、香ばしい衣から、肉の旨味がこぼれ出る。
こうなったら止まらない。
シジミ汁とおにぎりを頼む。そしてわがままをお願いした。
「おにぎりは、お母さんが握ってくれませんか」。
「もう今では息子が握っているのよ。息子の仕事を奪っては悪いわ。でもね握ろうかしら」と、快諾してくれた。
鮭、梅干し、昆布の佃煮、焼きたらこがそれぞれ入った、おにぎりは小さい。
子供の握りこぶしくらいである。
海苔が巻かれ、青海苔とゴマが天にふりかけられたおにぎりを、一ついただいた。
手で持つと、ふんわりとして優しい。噛もうとすると、米がハラハラと口の中で舞った。
それでいながらおにぎりの形は崩れることがない。
握り具合が精妙なおにぎりである。
これはおにぎりではない。我々と神とをつなぐ“おむすび”だ。
懐が深い、包容力を兼ね備えたおかあさん、谷脇良子さんそのままの姿を宿した、真実のおにぎりだ。
マッキーさんが食べたメニューの他に、高知家の〇〇編集部おススメの「編集部いただきメニュー」をご紹介。
店名に「お茶漬けの店」とあるからには、お茶漬けを頼まない手はありません。
お茶漬けには「のり」「たらこ」「梅」「シラス」とバリエーション豊かなラインナップがあれども、そこは高知といえば「カツオ茶漬け」でしょう。
店でさばく鮮度のいいカツオに熱々の出汁をかけて、まるでタタキのように表面だけうっすらと火が通ったカツオの身と一緒に、サラサラザブザブと流し込めば、これ以上の高知の夜の〆はありません。
高知県高知市帯屋町1丁目「お茶漬けの店 たに志」にて