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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2021年5月30日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、高知県民が大好きなフルーツ「土佐文旦」を使った絶品スイーツを「マンジェササ」でいただいた。
高知の人は、文旦と生姜への愛がすごい。
それぞれ生でも食べる他、様々な料理に使用し、変化もさせる。
他県人に比べてこの二つへの愛は、ダントツに深いように思う。
文旦と生姜。
どちらもきれいな顔立ちをしているが、くせモンである。
生姜は辛い刺激があるし、文旦は甘酸っぱいが、苦味を隠し持っている。
なんでも昔は、文旦に塩をつけて食べていたという。
この一筋縄でいかないという性格が、土佐っぽの性格と一致するのか、兎にも角にも深い想いを抱いている。
創業23年となる洋菓子店「マンジェササ」の笹垣さんも、そんな文旦愛に満ちた人である。
最大の魅力である苦味を生かそうと考案した菓子は、十年の間、人気スィーツとして多くの人から愛されている。
白木果樹園の土佐文旦を使ったケーキは2種類。
文旦グラタンと文旦タルトである。
使う文旦は、ハウスだと水分量が多く、生クリームに負けてしまうので、露地栽培物を使う。
「土佐文旦のグラタン」の作り方を見てみよう。
用意するものは、艶出しの蜂蜜入りシロップのナパージュとジェノワーズ(スポンジ生地)とカスタードクリームである。
繰り抜いた文旦に、カスタードクリーム、果実、ナパージュ、ジェノワーズと重ね、さらにカスタード、果実を入れてカスタードを重ねていく。
これを一日寝かせて落ち着かせる。
翌日、砂糖を振りかけ、バーナーの炎で焦げ茶色にカラメリゼしていく。
砂糖が焦げた苦味も美味しいが、この焼くということによって、皮の油分が燃えてグッと美味しくなるのだという。
黄色い文旦と、焦げ茶色の表面のコントラストが美しい。
カリッとスプーンでカラメルを割り、グラタンの中を掘り出す。
カラメルの太い苦味と文旦の爽やかな苦味が共鳴しあい、なんとも優美な時間を運んでくる。
そこへ、カスタードクリームの柔らかな甘味が追いかける。
文旦、カラメル、ジェノワーズ、クリームという、様々な食感が口の中で開き、なんとも楽しい。
文旦の苦味を生かした大人のスイーツであり、昼より夕方が似合う菓子だろう。かた
苦味という、菓子には禁じ手の要素を生かした、憎いスィーツである。
かたや「土佐文旦のタルト」はどうだろう。
小ぶりのタルトの上には、文旦が重ねられ、上に生クリームが飾られた、可憐なお姿である。
可憐なるお姿であるが、一個近く文旦が使われているという贅沢なタルトなのである。
見えている果実と生クリームだけではない。
文旦ジャム、カスタードクリーム、文旦果実が、巧みに重ね合わされた菓子なのであった。
そのバランスがいい。
文旦が、カスタードクリームやジャムという自身より甘い物によって、かえって存在感を増している。
「生で食べた方がいいじゃないと思われたくない。そう思われないよう懸命に作りました」。
笹垣シェフはそう言って目を輝かせた。
生で食べる文旦とは違い、クリームやジャムとの兼ね合いだろうか、色気がある。
だから、食べる人は、なおさら文旦への愛を深めるのである。
高知県高知市高そね「マンジェササ」にて