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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2021年4月4日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知県安芸郡安田町で自然薯を使った丼を出す「味工房じねん」にお邪魔してきました。
今回の高知満腹日記取材ツアーは炭水化物攻撃だった。
一日目が米中心で、二日目が小麦粉中心というラインナップである。
それぞれ6〜7軒回るという強行軍だったが、飽くことがない。
つまりそれだけ高知には、豊かな変化にとんだ炭水化物文化があるということである。
まず、初日朝に山道を走ること1時間。辿り着いたのは安芸郡安田町にある食堂「味工房じねん」である。
山々と田んぼに囲まれた、空気が綺麗な場所にあって、地元のお母さんたちが自然薯を使った料理を作っているという。
「お早うございます!いらっしゃいませ」
店に入るなり、お母さんたちの明るい声が響いた。
お母さんが元気な食堂はいい。
もう、それだけで、お腹がすく。
ご飯がおいしくなる。
ここ「味工房じねん」も、数人のお母さんが、明るく、元気を振りまいていた。
お目当ては、地元で採れた自然薯を使った「じねん丼」850円である。
朝から自然薯で精をつけるなんて、いいじゃありませんか。
ご飯に自然薯だけがとろりとかかった山かけご飯かと思いきや、親子丼の真ん中に自然薯おろしをのせた丼だった。
その親子丼の味がいい。
ご飯をワシワシと食べさせる力を持った半熟の卵の甘みと丼つゆの甘辛さの出会いがいい。
そこへとろろ芋がからむのである。
そう、親子丼の濃い甘辛さに、優しい自然薯の味がふわりとかぶさってくるのである。
甘辛さが和らぐ上品さがあって、心が和む。
何かこう、元気溌剌とした男子が、一瞬見せた柔らかな笑顔のような安堵感がある。
これは他にはない。
でも、この地で採れる自然薯の底力があってこそ、実現する味なんだろうな。
自然薯を椀種にしたすまし汁も、またいい。
食べたのは3月であったが、お母さんたちによると、旬である11〜12月だと、もっとおいしいという。
「お餅みたいにブリブリとして、おいしいがですよ」と、婦人会「なかやま山菜工房」代表の 竹内幸恵さんは言われた。
地元のお母さんたちを集めて婦人会を作り、このじねん工房の料理を作り出して10年になるという。
この味には、皆さんに喜んでもらいたいという人情が滲んでいるのである。
嬉しくなって、これからも炭水化物を食べ続けるというのに、「いなり寿司」と「五目チャーハン」も頼んでしまった。
いなりは、鮎を狙ってやってくる釣り師が、片手でも一気に食べられてお腹いっぱいになるようにと、でかい。
地の柚子による柚子酢のまろやかさがきいて、柔らかな味わいがいい。
五目チャーハンも中国料理店のそれとは違う、炒飯というより醤油のきいた焼飯で懐かしさが漂う。
そこで一句
「母の愛 自然薯添い寝 やりこうて」(やりこうて、は土佐弁で柔らかい、という意味)。
高知県安芸郡安田町正弘「味工房じねん」にて