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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2021年2月21日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食家・食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回はマッキー牧元さんが「キングオブ町中華」と絶賛する高知市の「宝永」をご紹介。
※宝永は2022年6月閉店しました。
いったいこの人の頭の中はどうなっているのだろう?
僕がキングオブ町中華と認定して、愛してやまない「宝永」の74歳となるご主人である。
例えば炒飯である。
「炒飯は、ちょっと甘い方が美味しいんだ。だから煮豚を炊いたタレを少しいれる。醤油ではダメだね」。
「炒飯は、バラバラがうまいっていうでしょ。それ違うんだな。ちょっともっちりが一番美味しい」。
それぞれの料理に、なにが美味しいかという「ことわり」がある。
老主人の作る炒飯は、なぜか懐かしく、暖かく、一度口にしたら止まらない。
例えば「砂肝」である。
頼めば、中華鍋でさっと素揚げしてから上げ、また中華鍋で軽く味付けして出してきた。
食べれば砂肝特有の、コリっとした食感ではなく、柔かい。
ムチっとしてなんともうまい。
聞けば、「重曹に30分つけるの、そして洗う。この下ごしらえをしておけば柔らかくなる」
そうキングオブ町中華のご主人は答えた。
作り方を見ていると、一旦素揚げにしてから、醤油 少しの砂糖 そしてネギ微塵絡めて完成させる。
でも揚げてる途中でつまんで、柔らかさチェックしている。
芸がこまかい。
例えば「酢豚」である。
赤ピーマン、玉ねぎ、茄子、獅子唐、椎茸と合わせた骨つき酢豚を食べれば、黒酢主体なれど、味が丸く、優しさがある。
気取っていないが、濃すぎることも甘すぎることもない。
黒酢を、かなり入れる。
味の秘訣をまた聞いてみた。
すると奥より、謎の瓶を取りだしてみせる。
瓶の中には黒い液体が入っていた。
「これなんだと思う? 梅干しを酢や醤油に漬けたもなの。この汁をちょっと入れてやると美味しくなるんだよ」。
今夜はシュウマイがあるというので、頼んでみた。
すると、皮はトロトロで、よく練られた豚肉の餡が甘い。
その豚肉の陰から、ほろ苦みが現れる。
聞けば、ふきのとう入りシュウマイだという。
肉の旨味の後からほろ苦さが追いかけて、後を引き、癖になる。
シュウマイに季節を盛り込む町中華が、いったい日本の他のどこにあるというのだ。
恐るべし。
こういう点も「キングオブ町中華」と呼ばせていただきたい理由である。
豚足を頼めば「関東では味噌、九州ではポン酢だけどね。高知では塩で食べるんよ」と、のたまう。
それもただの塩ではなかった。
塩に一味やガーリックなど色々なものが混ぜられて、その複雑な塩気で豚足が一層美味しくなる。
名物の餃子は、ザクッとした歯ごたえのある白菜と、皮が焼けたカリカリが出会うところが、たまらなくいい。
タレはラー油中心だが、酢とこの塩七味を混ぜたタレにつけると、白菜の甘みが引き立って、ああうまいこと。
もやし炒めはこうである。
豚バラを炒め、塩をしてからもやしを入れ、醤油少しと砂糖にオイスターソースを少し注ぐ。
スープが入っていないのに、入っているかのような旨味があって、もやしの淡い甘みを引き立てている。
「麻婆豆腐」も頼んでみた。
ひき肉を炒めて甜麺醤を入れる。
スープを入れてから何度か味見をし、豆腐(茹でない)を投入した。
ああ、粗挽きのひき肉を噛みしめる喜びよ。
ニンニクも生姜も豆板醤入っていないのに、豆腐の柔らかさと甘さが生きていて、これぞ町中華の「麻婆豆腐」の味である。
「夜だからね。ラードでやらずにいいサラダ油でやるとうまい」という「あんかけ焼きそば」は、あっさりとしていて夜の胃袋を思いやった出来である。
スープの旨みにあふれていて、そこへ少しオイスターソースの旨味と、最後にかけたごま油の香りがアクセントする。
いやあ、これ、散々料理を食べた後でもペロリといけちゃうんだなあ。
ずいぶん食べたが、ここに毎月通って、全料理制覇したい。
現在の夢は、それだけである。
高知県高知市廿代町「宝永」にて