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食べ歩きスト・マッキー牧元の「もう一度食べたい高知の麺ベスト3」高知満腹日記その71

この情報は2019年10月7日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

第3位 須崎市「まゆみ」の「鍋焼きラーメン」

全国広しといえど、高知にしかないラーメンである。

注文すると、沢庵が乗った小土鍋が運ばれる。

蓋を取ると、醤油の匂いとともに猛烈なる湯気に包まれた。

焦げ茶色の、まだグツグツとたぎっているスープに、うっすらと油が浮かび、青ネギとちくわが散らされている。

鍋の真ん中には生卵が落とされ、スープの熱で白身はかたまりつつある。

そんな具の隙間から、薄黄色の細い麺が顔を覗かせている。

ここは、須崎名物の鍋焼きラーメン、「まゆみの店」である。

元々は、戦後すぐに須崎市で開業した「谷口食堂」(今は閉店)が考えたラーメンであるという。

スープを慎重にすする。

熱い。相当に熱い。

息をかけながらゆっくりスープを飲み、麺をゆっくりとすする。

醤油味のスープは、醤油味も塩もしっかりとあって、うま味が濃い。

優しい甘みも潜んでいる。

麺は煮込まれているというのに、コシの強く、シコシコと歯の間で弾む。

麺のシコッ、ネギのシャキシャキ、ちくわのふんわり、親鶏のクリッと、異なる食感が、ハーモニーを奏でる。

それが楽しい。

合間で、発酵して酸味がにじみ出た沢庵を、ボリボリとかじるのも良い。

つゆの濃度が濃いので、卵の黄身をつぶしても、溶けていかない。

鶏油に覆われているので、最後まで熱々である。

この香ばしい鶏油と、甘辛い味わいで、当然ながらご飯が恋しくなる。

ご飯をもらって、掻き込む。

笑う。

二度美味しい上に、困ったことがあった。

二、三日経つと、また無性に食べたくなるのである。

高知県須崎市栄町「まゆみの店」にて

関連記事⇒「お鍋が熱いき、気をつけて食べてよ」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

第2位 香南市「廣末屋」の「ニラ塩焼きそば」

お母さんが目の前の鉄板で焼きそばを作る。

ニラを入れた時、思わず「ウソだろ」と叫んでしまった。

それほど大量のニラが投入されたのである。

これは、「ニラ塩焼きそば」というより「そば入りニラ塩焼き」と呼んだ方がいいんじゃないか。

それほどにまで思ってしまう、お姿なのである。

麺とニラの量が逆転して、ニラ炒めの中で、時折麺に遭遇するといった具合だが、食べるとどうだろう。

口に運んだ瞬間、「うまいっ」。思わず叫んだ。

ニラが甘い。とにかく甘いのである。

柔らかくて、シャキシャキと千切れて、歯に挟まることがない。

しなやかに他の具や麺と抱き合う。

甘く、香り高く、ワシワシ猛然と、鼻息を荒くして食べさせてしまう力がある。

途中でレモンをかけると、その酸味がいっそうニラの甘みを生かした。

ああ、箸を運ぶ手が止まらない。

聞けば周りがニラ畑なのだという。

「美味しかったです」というと、お母さんは言われた。

「朝穫れ、産地直送じゃなきゃ、この味は出せないの」。

その言葉が忘れられない。

高知県香南市夜須町上夜須「廣末屋」にて

関連記事⇒「高知の濃ゆい焼きそばに恋をしたの巻〜第一弾」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

第1位 いの町「時屋」の「せいろ」

何と言っても、ロケーションが素晴らしい。

山奥の一軒家で、眼下を流れる川のせせらぎと、木々の葉が風に揺すられる音、そして陽光が指す山々の景色を眺めながら蕎麦をすする。

蕎麦にとってこれほど幸せな光景はあるまい。

ここでの昼酒ほど、幸せな時間の過ごし方はないだろう。

運ばれて来た蕎麦を手繰る。

「ずるるるっ」と勢いよく手繰れば、野趣に富む、草の香が漂う。

蕎麦はしなやかで、ほのかに甘みを秘めている。

しばらく食べたら、窓を開け、蕎麦を窓の外に出して陽を浴びさせたのち、再び手繰ってみた。

沢や木々の香りと蕎麦の香りが入り混じる。

蕎麦を手繰る音と渓流のせせらぎが共鳴する。

体に流れ込んだ清涼な空気が、蕎麦を生き生きと輝かす。

一生忘れることなき、蕎麦体験であった。

高知県吾川郡いの町中野川「時屋」にて

関連記事⇒「日本最高のシチュエーションで食べる、そば『時屋』」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その52