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この情報は2022年5月6日時点の情報となります。
高知県で一番のアーケード街といえば高知市の「帯屋町商店街」で、その通りから一歩裏に入ったところには、いかにも「飲み屋横丁」といった通りがいくつかあります。中でもよく知られているのが、「高知55番街」です。大阪の方には、「心斎橋筋商店街と法善寺横丁の関係」といえば、イメージがわきやすいのではないでしょうか。
かつて大阪ですし職人として修行をし、今は高知55番街で、「酒と肴・鮨Dining 井のうえ」を経営する井上敦史さんに、高知県のすし店事情や、お店で出す食材へのこだわりなどをお聞きしました。
─高知県は、人口当たりで見ると47地道府県でもっともすし店が少ないと聞きました(「平成26年経済センサス‐基礎調査」総務省統計局)。目の前に太平洋があり、漁港もたくさんあります。意外でした。なぜ、すし店が少ないのでしょうか?
井上さん:数字の上だけではなく、実感としても少ないのは確かですね。帯屋町かいわいでも数えるほどしかありませんし、高知55番街ではうちが唯一です。地元の人はすし店というと、敷居の高さを感じてしまうようです。少ないから敷居を高く感じてしまうのか、敷居が高いせいで少ないのはわかりません。
とはいえ、高知県は魚介類が充実しているのも間違いありません。地元の人たちは、ごくごく普通の居酒屋でも新鮮な魚介類を食べることができますし、自分で調理するにも市場の魚屋にもいい魚介類が並んでいます。
─「井のうえ」は、「すし店」ではなく「酒と肴・鮨Dining」と名乗っています。なにかこだわりがあるのでしょうか?
井上さん:これは、「すし店としてだけではなく、居酒屋としても満足のいくお料理を出します」との表明と思ってください。定番のすしネタを切らさないようにしているだけではなく、旬で新鮮な魚介類や野菜のメニューもそろえています。「うちはすし店なんだから、すしを注文してくれ」といったお店の話もたまに耳にします。それとは逆に、「お客さんがおいしく食べてお酒も楽しんでくれれば、すしにはこだわらない」がこのお店の方針です。
─すし職人になった経緯を教えてください。
井上さん:生まれたのは1972年で、土佐市の出身です。高校は高知県立高岡高等学校 宇佐分校でした(1999年3月閉校)。卒業後2年程度、香川県でほかの仕事をしていました。ただ、「このままでいいのかな。一生食いっぱぐれのないように手に職を付けたい」と考えていたときに、「大阪で、すしの修行をする人を探している。行かないか」と誘ってくださる方がいて、飛びつきました。
「大阪で板場の修行」といえば、「キタ」とか「ミナミ」のような繁華街が舞台だと思われるかもしれません。私の場合は、大阪府北部の豊中市でした。近くに服部緑地公園もあって閑静な街で、お客さんは大きな会社の転勤族が多かったです。
阪神・淡路大震災が発生したのは、この豊中での修行時代です。当日にお店を開けたら、「知り合いが被災した。食い物をもっていってやらないといけない」と、なじみのお客さんが次々来ました。夕方だったか、店のオーナーが「こんな大変なときに、営業どころではない。早く店を閉めろ」と言ってきました。「閉めるもなんも、もう全部売り切れました」と答えたのを覚えています。
─「井のうえ」はいつ始められましたか?
井上さん:修行を終えて、高知県に戻ってきて、しばらく居酒屋の店長などをしていました。オーナーが別にいて、お店を任される形なので、いわゆる「雇われ店長」ですよね。2年前に、そのオーナーから、「そういえば、井上はすしができるんだったな。好きにやっていい」と言われて、2年前に始めたのが、この「井のうえ」です。
昨年には、経営権を譲ってもらって、完全に自分のお店になりました。
─完全に自分のお店になったことで、変わったところ・変えたところはありますか?
井上さん:料理の内容が変わったとか、接客が変わったとかはありません。今のところは、「責任が重くなった」といった気分の問題だけです。ただ、以前から、お店の建物としての構造はこれとは違うほうがいいとは思っていました。
「お客さんがどういった表情で食べているか」を知りたいし、互いに話もしながら料理も作りたいと考えています。「お客さんと触れ合うことができる」が、この種のお店をやる最大の楽しみですから。にもかかわらず、1階がカウンター席で、2階が座敷になっています。1人でやっていることもあって、2階は目が届かないんですよ。「手前がカウンター、その奥に座敷」といったように、ひとつの空間にまとまった物件があったら、いずれは、そこに引っ越してもいいと思います。
─帯屋町以外や高知55番街以外でお店をやるつもりはありますか?
井上さん:地元の人も他県の人も来てくれることでは、この付近以上のところはありません。高知県で手に入る食材にも文句がないんですよ。先のことはわかりませんが、少なくとも、もう高知県を離れることはないでしょう。
─地元客と、観光やビジネスなど他県からお客の比率はどのくらいですか?
井上さん:地元が7、他県が3ぐらいです。観光スポットである高知城が西に300メートルほどのところにあります。東に同じぐらいの距離を行くと、歌謡曲の『南国土佐を後にして』で知られるはりまや橋です。JR高知駅も近くて、観光客向けホテルもビジネス客向けホテルもお店の周囲にたくさんあり、それらの宿泊客が来てくれます。
─高知人として、他県から来られたお客に対してどんな気持ちで腕を振るっておられるのでしょうか?
井上さん:関西にはカツオやハモなど高知県産の食材がたくさん入っています。そのため、大阪などからの人は、「高知県の食べものはおいしい」と知っているし、「現地なんだから、魚などは新鮮なものが食べられる」と期待してやってきます。「新鮮な魚」となると、すし店を探す人が少なくありません。握りずしは江戸時代に江戸で始まったこともあって、東京からの人もすしが好きな人が多く、高知県でもすし店を探します。
ところが、最初に申し上げたように、高知県にはすし店は多くありません。うちは、その数少ないすし店で、しかも高知55番街という県内で一番の飲食店街にあります。うちががっかりさせてしまうと、「高知のすしはたいしたことがない。魚も期待はずれだった」と思ってしまうお客さんがいてもおかしくはありません。だから、他県からのお客さんが来ると、「責任が重大だぞ」と気が引き締まりますね。
酒と肴・鮨Dining 井のうえ
住所:高知県高知市追手筋1-8-12
電話:088-872-5010
URL https://sushiinoue.owst.jp/
営業時間:[火~日・祝日・祝前日]18:00~翌1:00 (料理L.O.翌0:00、ドリンクL.O.翌0:30)
定休日:月曜日 ※月曜日が祝前日の場合、翌火曜日休み