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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2021年2月14日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食家・食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は四万十川の恵みいっぱいのうどんがいただける「田子作」を訪問。
その店は四万十川の近く、田んぼの中に佇んでいた。
名を「田子作」という。
初めて訪れたのは、8年前である。
厨房に立つおばあちゃん1人の後ろに、青々と広がる田んぼと山々が美しかったことを思い出す。
アオサうどんに野菜を追加して頼むと、おばあちゃんが言った。
「野菜は全部自分の畑で作ってんのよ」
「そうですか。今はどんな野菜ですか?」
「人参でしょ。ほうれん草に大根、ネギ。あとは忘れた」。
可愛らしいおばあちゃんはそう言って笑った。
薄口醤油の甘さが効いたこぶだしの淡い色のつゆが美味しかったことが忘れられない。
そして、今回8年ぶりに訪ねた。
佇まいは変わらず、カウンターから厨房越しに見る畑の光景が、清々しい。
だが店主は変わって、別の女主人がやってらっしゃる。
前の女性から引き継いだのだという。
使う野菜は変わらず自家菜園で、「80%が自分とこの畑のものです」と静かに言われた。
佇まいもさることながら、こんなうどん屋は他にないだろう。
日照率が高く、野菜がよく育つ高知だからこそできる商いなのかもしれない。
そこで野菜が入った「田子作うどん」650円を頼み、できるまでおでんを少しつまみながら、待った。
「田子作うどん」が運ばれる。
うどんの上に乗せられしは、青菜、白菜、ネギ、にんじん、玉ねぎである。
白菜を、ネギを、人参を、玉ねぎを食べて思う。
野菜の味が濃く、甘い。
「太陽の光と土地の養分をいただきながらのびのびと育ちました」と言っている野菜である。
嬉しくなって、次に高価なうどんである「四万十川うどん」2,000円も頼んだ。
四万十川の名物が、こじゃんと(土佐弁で「たくさん」)のったうどんである。
川海老はなんとも香ばしく、ほろ苦い鮎の素揚げで胃袋が刺激される。
そこへ野菜の甘みと青のりの香りが加わって、どこにもないうどんの味が広がった。
途中で、青海苔をつゆに溶いてみた。
変わらぬ薄口醤油の甘さが効いた淡い色のつゆの味は優しくまろやかで、そこへ青のりの香りが溶け込み、笑顔を呼ぶ。
「野菜は有機に近いやり方で育てているのよ」。
と、おばさんは少し誇らしげに言う。
自ら作る野菜に誇りがあるのだろう。
「つゆもおいしいです」と伝えると、
「鰹節、メジカ、鶏ガラで出汁をとっているんです」と答えられた。
なかなかの手間隙である。
澄んだ味わいだが、深みがある。
そこへ太いうどんがもちもちとからむ。
この店で一人静かに食べるうどんは、いい。
うどんの味も素晴らしいのだが、なにより、都会の喧騒や速度とは無縁で、時間が止まっている。
白昼夢のようなのである。
高知県四万十市間崎「田子作」にて