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「高知の恵みが高知の酒を恋しくさせる。さあ座屋で、いざっていきやぁ」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2018年12月30日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

「いざっていきやあ」。

「ゆっくりしていきなさい」。「家に上がって、くつろいでください」。

それをを、高知では「いざりやぁ」、「いざっていきやぁ」と話すのだという。

ここはそんな気持ちを込めて店名がつけられた「座屋(いざりや)」である。

高知県の食材を駆使した、割烹仕立ての料理を出す。

高知といえば皿鉢料理のように、皿にどんと盛り付けて、飲めや食べろやという、豪放磊落、剛毅木訥な料理が多い。

しかし一方で、こういう洗練された料理もまた、高知の恵みを活かしている。

料理は全てコース仕立てで、タイミングよく、次々と出される。

向付は、「焼き胡麻豆腐 春菊のソース」。もっちりとした自家製胡麻豆腐の香りと、醤油と合わせた春菊ソースの青々しい香りが響きあう。

続いての煮物椀は「伊勢海老真薯の椀」である。椀種として、伊勢海老の真薯が置かれ、伊勢エビの味噌、霜降り大根、蕪、椎茸、春菊が椀ツマとして添えられる。

吸い口の柚子を口に寄せて、露を飲む。

丸く淡い滋味が、ゆっくりと舌に広がって、喉に落ちて行く。

そこで真薯を崩し、口に含む。

伊勢海老の優しい甘みと海老ミソのコクが合わさって、思わず眼を細める。

そして露は、海老の旨味が次第に溶けて、旨味が膨らんでいく。

ふと、須崎市浦の内池ノ浦の伊勢海老料理屋「中平」で見た、元気よく動き回る伊勢海老と、透き通る海を思い出した。

お造りは、「アメリカの鯖です」と、冗談を言ってだされた宇佐(USA)の鯖と戻りガツオ、昆布〆したヒラメとタチウオである。

どれも質が極めて高い。

カツオはキメが細かく、戻りらしい脂が乗り、もちもちとした歯ごたえがある鯖は、上品な脂が乗っている。

太刀魚は、後から旨味がじんわりと広がっていく。

ああ酒が進む。

高知で一番古い蔵だという「久礼」は、妙な香りなく、キレがいい。

何か甘えてくるようなところが微塵もなく、男前な酒である。

高知の酒は、そんな酒が多い。

だからこそこうした、高知の魚の勇壮な味に合うのだろう。

焼き物は、高級魚でもある「白甘鯛の若狭焼き」である。

ふっくらと焼きあがった白甘鯛には、品がいい甘さがあって、思わず顔が崩れる。

これには旨味が深い「豊の梅」が合う。

聞けば、高知の人は白身の魚は、ほとんど食べないという。

やはりカツオ文化であり、鯖文化なのだろう。

あとはイワシやアジ、キンメといったところである。

高知のミネラル豊富な海で育った魚は、うまい。

日本でも有数の魚種の多さを誇る漁場があるのだから、もっともっと多種な魚を食べて欲しい。

いや、もっと高知に来て様々な魚を食べたい。

白甘鯛を食べながらそう決意した。

続いては、「四万十の青海苔の天ぷらと川エビの素揚げ、ウツボの唐揚げ」である。

青海苔は香り高く、川エビは小さな体に旨みを閉じ込めて、ウツボはふわっと歯が入ると、コラーゲンの甘みをにじませる。

これまた高知のスターたちである。

次は「吹き寄せ」と来た。

高知ならではの四方筍、大黒しめじ、水晶銀杏、車海老、栗、レンコン、かぼちゃ、雲子、イクラ、ブロッコリーが合わされ、土佐酢あんがかけられている。

晩秋の恵みが、口の中で花開く。

そして最後は肉料理で、「ダバダ火振り豚」が出された。

高知の地酒栗焼酎「ダバダ火振り」の酒粕を食べさせて育てた四万十の豚だという。

焼き松茸と、4種のナッツと白味噌を擦りつぶしたソースが添えられる。

この豚は、一瞬、牛かと思うほど、肉の色が赤い。

ダバダ火振り酒粕を食べ過ぎて酔ったのか、運動量が多いのか、恥ずかしいのかはわからないが、噛めばたくましい肉汁がどどっと流れ出る。

軟弱ではない、噛む喜びに満ちた豚肉である。

海を食った。山も食った。四国の恵みを、ありがたくいただいた。

そんな感謝の気持ちをさらに深めてくれるのは、締め卵かけご飯である。

独自のやり方で作る、たまらない卵かけご飯の話はまた今度。

 

高知市廿代町「高知座屋」にて