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「酒飲み天国高知に学べ!これぞ究極のお座敷遊び《酒のロシアンルーレット》とは?」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その53

       

この情報は2019年5月26日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

酒飲み天国高知には、他の県にはないお酒のお座敷遊びがある。

元々は、貴重なお酒を、いかに大手を振ってたくさん飲めるかということで考案されたらしい。

そのお座敷遊びを、高知市の由緒ある料亭「濱長」にて、むふふふ、美しい芸妓さん「由喜千代」さんから教わりながら、一緒に遊んでもらった。

遊びは三つある。

まずは「菊の花」を紹介しよう。

お座敷遊び その壱「菊の花」

用意するものは、参加する人数分の盃とお盆、皿鉢料理などに飾られている小さい黄色の菊の花である。

菊の花がなければ、盃に隠れるものならなんでもいい。

盃を盆に伏せて並べ、その中の一つに菊の花を忍ばせる。

そしてどこに隠されてるかわからなくなるように、よくシャッフルする。

人数は最低4人以上は欲しい。

できれば8人〜10人くらいが望ましいな。

用意ができたら、盃を取る順番を決め、歌を歌う。

♬菊の花〜 菊の花〜 開けてうれしい菊の花 ♬誰が取るのか菊の花〜

と、手拍子をしながら歌い、盆を回していく。

メロディーは、なぜか桑田圭祐作詞作曲による明石家さんまさん扮する「アミダババア」のテーマソングだから皆さんご存知だろう。

一人ずつ、盃を開けてゆき、菊の花が現れたら拍手喝采となる。

その人までに開けられた盃分、ご褒美として全部飲めるのである。

例えば10人いて、最初の盃で当てたら一盃。

しかし6人目なら6盃、10人目なら10盃に注がれた酒を、一気に飲み干す栄誉を得るのである。

この“ご褒美として”という感覚が、いかにも酒好きの土佐人らしい発想である。

そして次はその飲んだ人が、菊の花を隠す権利があり、隠した隣の人からまた歌を歌いながら、盃を開けていく。

もちろんもう一度自分が当たって10杯飲む可能性もある。

この「酒のロシアンルーレット」。簡単であるし、異常に盛り上がるので、ぜひ各地の宴会でもやってもらいたい。

お座敷遊びその弐「可杯(べくはい)」

次が、「可杯(べくはい)」である。

これは特殊な盃と独楽を用いて遊ぶ。

朱塗りの丸盆に、陶器の天狗、ひょっとこ、おかめの盃と、六角の面ごとに盃の絵柄が手描きされた、小さく可愛い「独楽」という「可盃セット」が用意される。

曲者は、この盃である。

天狗盃は鼻が長く、安定が極端に悪いので、置くことができない。

ひょっとこは穴が開いているので、人差し指で常に穴をおさえておかないと酒がこぼれてしまうので、置くことができない。。

おかめは「女性」なので、顔を下にしてしまうと失礼にあたるので、置くことができない。

ということで、お酒を注いだら、“置くことができない”盃なのである。

つまり絶対飲み干さなくてはいけない。

いや土佐人の感覚なら、飲み干すことが堂々とできる、嬉しい盃なのである。

天狗の盃が一番酒が入り(140cc強)、次にひょっとこ、オカメの順となる。

そして順番でこまをまわしてみんなで歌う。

♬べろべろの〜 神様は 正直な神様よ ♬おささ(お酒)の方へと おもむきゃね おもむきゃね

この“おささ”は言葉を好きに決められるので、“すけべ”とか“イケメン”とか言葉を変えて楽しむことができる

こうして唄で囃子たてながら独楽が止まったら、止まった独楽の軸先の延長線上に居る人が「当たり」です。

「当たりの人」は、独楽の出した絵柄の盃でお酒を一気に飲む、権利がもらえるのである。

そしてその飲むスピードも肝心で、みんなのカウントに合わせて正確に飲む。

天狗は3カウント、ひょっとこは2カウント、おかめは1カウントで、皆が「はい、3.2.1」と数えるのに合わせて飲む。

早すぎたり、遅すぎるとアゲイン。もう一回。

「♬こんな遅いの見たことない、あ、見たことない ♬それもう一杯 もう一杯」と、囃子を歌われ。もう一杯飲むこととなる。

また、飲み終わったら必ず「ごちそうさま」と言わなくてはいけない。

一気に飲むことと、速度に気を使いすぎてると、飲み干した達成感で、つい言うのを忘れてしまう。

すると今度は「♬ごちそうさまが聞こえない あそれ、ごちそうさまが聞こえない ♬それもう一杯 もう一杯」と、囃し立てられ、アゲイン。

もう一杯飲まなくてはいけない。

なんと素敵な遊びだろう。

ちなみに可盃の「可(べく)」の字は、日用文・手紙文などで「可行候(ゆくべくそうろう)」のように、必ず上に置いて下には置かないところから》飲みほすまでは下に置けないような杯を指すようになったという。

もちろん飲めない人も参加でき、お茶などで代用したり、芸妓さんが

「いや〜、私、うんとハリキリすぎて喉が渇いたがよ〜。その盃を飲ませてくれんろうか?」と、粋な言葉で代わりに飲んでくれたりするのである。

「濱長」ではこのお座敷遊びと料理をセットにしたプランがあり、誰でも気軽に楽しめるのだという。

さてもう一つのお座敷遊び、ようこんなこと考えたわ、という、より難易度の高い「土佐はし拳」は、次回に紹介したい。お楽しみに。

続編はこちら⇒ 「【続編】酒飲み天国高知に学べ!これぞ究極のお座敷遊び《酒のポーカー》とは?」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その54

 

高知県高知市唐人町「料亭 濱長」にて